人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです ~壱岐旅行〜

自転車で壱岐一周を計画した。

 

単独での自転車旅行では毎回、もう二度とこんなキツイことはするまい、こんな寂しい思いはしたくないと強く後悔するのだが、なぜか何度も来てしまう。

 

深夜に壱岐に到着し、朝日がよく見える場所へ移動。

例に漏れず、寂しい気持ちに包まれる。私は2時間、何かにぶるぶる怖れながら、そして寂しさに耐えながら日の出を待つ。この寂しさは知らない場所に夜たった一人で過ごすことにより増幅されたものなのか、それとも普段は隠れているだけで本来私がもっている寂しさなのか。どちらとも検討もつかないがとにかく、寂しさなどが入り混じった不安をかき消そうとメモ帳にあれこれ殴り書きをする。

空が青みがかってきて、日の出を予感すると急に元気が出てくる。海を目の前にして、1人で一晩過ごしたのは初めてだった。段々と空が明るくなり、海に色がついてくる。

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「人間が こんなに 哀しいのに 

主よ 海が あまりに 碧いのです」

 という遠藤周作さんの言葉が頭に浮かんだ。意味はよく分からないけど、響きがよくて一度聞くと忘れられない。

特に今まで意識したことは無かった言葉だったが、今回の旅行はこの言葉がきっかけで道半ばにして帰ることになる。

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朝日に元気づけられて、私は次またその次の目的地へ行くも、正直あまり心に響くものがなく、今朝の鬱気分が再来。私はなんでわざわざこんなキツいことをしているのか。なげやりになって地図も見ずテキトーに漕ぎ進める。アップダウンもそんなに激しくなく、ぐんぐん進む。

当初の計画にはなかったがたまたま通りかかった「一支国博物館」に立ち寄る。考古学愛にあふれた元気な学芸員さんと意気投合し、展示物から糸島、福岡の歴史まで色々教えてもらった。糸島ってかなりすごいところなんですね!魏志倭人伝で一番多く言及されているのが伊都国なのだそうです。魏志倭人伝って邪馬台国のイメージしかなかった!

 

そんなこんなで後ろ髪を引かれつつ、一支国博物館を後にする。旅の道中で人とおしゃべりすること程元気の出ることはない。幸せな気分に浸りつつさらに漕ぎ進める。

その先には、そのまま博多に帰れる港があった。最初の鬱気分が続いていたら速攻帰っていたところだが、今は元気一〇〇倍アンパンマン!道の先にある「鬼の足跡、牧崎公園」へ進む!!!

ところがその道のりにはアップダウンの激しい、長い長い坂道が待っていた。手書きのテキトーな地図しか用意していないので、あとどれくらいで着くのか、この道で合ってるかすら分からない。

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しかも人家もほとんどない。暑い。昼ごはんも朝ごはんも食べていない。疲れと共に「なんでこんなことしてるんだろう」という後悔の念が再来。心身共にきつかったが、どうにか牧崎公園へ着く。

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途中でジブリ風立ちぬ』のさとみさんみたいな美しい人とすれ違って少し挨拶を交わした。テンションが上がった。

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牧崎公園は芝生もしっかり整えられていて、快適だというのが第一印象。

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しかし、もう一歩先へ進むと真下は海を見下ろす断崖絶壁。

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波が大きな岩にぶつかり砕けることによってできた白い泡。それらが青く消え去ってしまう前に次の波がやってきて、岩の周囲を白く塗り重ねる。これを何百年、何千年と繰り返してきたのだろうか。遠くを見れば、延々と広がる青い海。

幸運にも私の他に人はほとんど来ず、この雄大な景色を独り占めできた。

 

ここで再び今朝の言葉が浮かぶ。

「人間が こんなに 哀しいのに

主よ 海が あまりに 碧いのです」

 哀しいという言葉にひっぱれらがちだが、この言葉はすべてを手放してしまおうとする絶望から何かに生きる道へと転じた瞬間のつぶやきなのだとふと実感した。

人間は神や自然からすればあまりにちっぽけで、その事実は私を虚無な気持ちにさせる。しかし、遠藤周作さんはそこに生きる道を見出す。海の碧さとは、美しさか、それとも雄大さか、荘厳さか。何であれそれは私というちっぽけな存在を超えた大いなるものであり、それに圧倒され、魅入られ、心打たれて、私はどうにも生きざるをえないのだ。

主よ 海があまりに碧いので 人間はこんなにも哀しいけれど 生きていかざるをえないのです。

 

そんな事を考えつつ、海をボーっと眺めていると、今回の旅に目的があるとすればそれは全て果たされたのではないか、これ以上進むのは野暮ではないかという気がしてきて、早速予定を変更。さっき見かけた港に戻り、博多へ帰る事を決めた。

 

 

 

海と原っぱしかない牧崎公園に何の気兼ねなく長時間滞在し、その上突如博多に帰るなんて、一人旅でしかできない事だろう。散々一人旅をディスったが言わせてもらおう!ビバ一人旅!